《MUMEI》

◆◇◆

「その時私は‥まだ目が開いたばかりの、本当に何も知らない赤児だった。ふと横を見ると‥真っ白な七尾が月色の眼を私に向けていた‥」

「───────」

「とても優しい眼差しをしていた‥。私が夜な夜な泣き出すと、彼女は決まってふさふさとした尾で私を包み込んであやしてくれた‥」

「毎夜‥狐叉は姫様の側に‥?」

「ああ。だが‥彩貴は酷く嫌がってな」

 夜桜は苦笑を堪えつつ言った。

「何度も彼女を追い出そうとした。‥だが狐叉は、私の側を離れようとはしなかった」

 そう語る夜桜は、遠くを見るような目差しをしていた。

◆◇◆

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