《MUMEI》

 あいつが俺の部屋に一人で来た、ということに心は浮き立っていた。

 乾かしたスーツを持って脱衣所から出ていくと、あいつはあの姿のまま、サンダルをつっかけて、生ごみで膨らんだビニール袋を持って外に出ていった。

「あ〜、やばい!下のおばさんに見られちゃった!」
 あいつはばたばたと駆け込んで帰って、俺の顔を見ながら言った。
「こんなかっこうで見つかっちゃったよ!・・・昼間からお前となにかやばいこと、やってたんじゃないかって思われたらどうする?」

 笑いながら俺の持っているスーツを取ろうとするあいつの腕を、俺は掴んだ。スーツが下に落ちたとき俺は奴を抱きすくめていた。
 あいつは驚いて俺の腕でもがいた。だが、俺はさらに強くあいつを引き寄せた。

 俺の鼻息があいつの髪にかかる。あいつの鼓動がどくんどくんと俺の胸に伝わってくる。あいつの汗の匂い、髪の匂い、熱い体温・・・
 俺の一物は再び硬くなった。今度は隠しようもない。あいつの下腹をつつく。
 なぜかあいつは何も言わない。時間よ止まれ。劇終と落胆よ来るな。

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