《MUMEI》

訪問者は部屋に山積みの本を吟味し始めた。

「……あのぅ。」

「律斗は悩んでいる、しかし身近には色ボケ二人しかいない。
信用はしているが、自分の悩みではないので相談しにくいんだろう、違うか?」

「……お見事。」

ブラボー、と拍手喝采したくなった。

「俺で良ければ聞きますけど?」

頭を撫でてくれる掌の感触が心地良い。
相談、したくなる。

「……天然記念物みたいな純粋な友人が、原生人類みたいな先輩に恋しちゃって、今や恋人同士にまで発展して、ゲイ道まっしぐらなんです……」

口にしたら凄い内容だ。

「……心配なんだ?」

荷物整理の手を止めないで会話は進んでゆく。

「心配というか、だってマスのコキ方も知らない奴ですよ?!
生きていることさえ奇跡なのに、あの肉は骨まで喰うような先輩と……死にに行くようなもんだ!」

「俺もアイツ達がくっついたとき心配だったよ。
まあ、俺の場合はちょっと別の意志も混じっていたけどな。」

そうか、三人は家族みたいに育ったんだっけ……

「確かに、羊と狼みたい」

「いや、あれは羊よりは天然エロ頭巾……」

真剣に言うので笑ってしまう。

「赤じゃないんだ……」



「俺はあいつらとは付き合い長いから、どっかで信じちゃったのかな……
馬鹿だし、鈍感だし、どうしようもないくらい俺に依存してるけど、自分達で証明してくれた。
こっちがどんなに悩んでいても向こうは勝手に進んで行ってしまう。
……分かるか?」

「はい、俺も友達のこと信じます。」

人生の先輩だ。


「違うな、下らないことを悩むより恋せよ少年ということだ。」

口角が上がり並びが美しい歯列が見えた。
先輩じゃない、兄貴だ…………!兄貴と呼ばせて下さい……!



「ねぇ、多めに作ったから晩ご飯食べてってよ。この間頂いた日本酒のお礼もしたいし……すぐ、お迎えで来てくれるんでしょう?」

扉の隙間から鍋の蓋を持ったエロ頭巾ちゃんが顔を出して兄貴を晩御飯に誘う。

「飯は多い方が楽しいからな。飲もう、絶対楽しいから。」

悪い狼だ。
エロ頭巾ちゃんの肩に顎を乗せて腰回りを明らかにセクハラに見える撫で方をしている。

「明日も仕事だろ。あと、アレが飲んだ後、連れて帰るのは俺なんだからな?」

兄貴を迎えに来る年配の人は兄貴の兄貴だから超兄貴ということか……?


「そうだそうだ、メタボになるぞー!」

エロ頭巾ちゃんの野次。

「うっさい黙れ」

狼め、人目を気にせずキスかよ。

「――――ンン、」



「律斗、布団運ぶの手伝ってくれる?」

兄貴、なんて冷静沈着なんだ。
一生付いていきます。

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