《MUMEI》 ポールポジションすれ違いバイクの中にあいつは見当たらない。 展望台に入ると、数台のライダーが集まっているが、その中にも見当たらない。 そのままコースに入り下りを攻める。 梺の退避所でUターンし、また上る。 明らかにすれ違うバイクの数が増えている。 (何!?嫌な雰囲気やなぁ…) 展望台でUターンし、下って行くと左の退避所のような所に数台が待っていた。 俺が通り過ぎると同時に勢い良く飛び出してきた。 (やっぱりな(笑) しょうがない、相手してやるか(笑)) そこそこのペースで走ると、それなりに着いてくる。 下の退避所でUターンすると、更に数が増えて、周りから見るとレースでも始まったかに思えるだろう。 (ポールポジションかぁ、悪くない(笑)) 俺は、やや本気で攻め込んだ。 やはり、ミラーから消えていく。 後ろにいたバイクは一往復で脱落した。 後ろが入れ替わりながら数往復すると、数が減っていき、コース沿いのギャラリーへと変わっていった。 (最近の若い者はこの程度か!? 情けない…) 最後まで食い付いてきたのはNSRを始めとする5台程だった。 さすがに疲れてきた俺は、休憩する事にした。 あいつに気付かれたくない俺は、梺の退避所を通り過ぎ、少し離れた自販機にバイクを止めた。 なるべく峠の者達と関わらない為だ。 下手に関わると、あいつにバレる可能性がある。 コーヒーを飲みならがタバコに火をつけた。 (あ〜、さすがに疲れたなぁ… この服じゃ分が悪いしなぁ…) 普段はバンクセンサーの付いたライダーパンツとパット入りのジャケットだが、里帰りついでの俺は、ジーンズにパット入りジャケットだった。 ジーンズの為、膝を擦れない俺はコーナーで膝をたたむ分バランスが悪く、攻めきれていない。 (失敗したなぁ…) 少し後悔した。 前へ |次へ |
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