《MUMEI》
第三十八話:痛いのは嫌
 動けば動くだけ切傷は走る。
 自分の体に絡まっているのは刃の糸。
 そう簡単にこの状況から抜けさせてくれないのはさすがだ。
 だが、それでも白真は勝気な表情を崩さない。
 どんな状況に陥っても、負けるわけにはいかないからだ。

「その顔は余裕から来るものなのか・・・・それとも虚勢か・・・・」

 海原は白真と向き合いながらそう呟く。

「さあね、だけどこれはずしてくれないか?
 痛いのは好きじゃないんだ」

 微笑を浮かべながら白真は頼むが、

「それは無理な話だ。さっさとそいつで命を絶つのもいいだろう?
 なんなら電流でも流してやるが」

 バチバチと海原の手に電気が走り始める。
 やはり換装士だけではなく、
 魔法のいろはぐらいは一通り使えるようだ。

「そいつは痛そうだな。さて、どうしたものか・・・・」

 騒いだとしても何の解決にもならない。
 まるでバスターの手本のような戦い方だと、敵である海原でもそう思わずにはいられなかった。
 しかし、だからこそ冷たく告げる。

「死ぬといいだろう」

 そして電流が糸を伝い白真の体を直撃するその瞬間!

「今だ!」

 白真は体から莫大な熱を発生させた!
 電熱が加わった糸は一瞬のうちに消滅する!

「なにっ!」
「油断すんな!」

 召喚剣が海原の胸を斬りつける!

「ぐっ! この!」

 空間から再び大剣が飛び出し、澄んだ金属音が響き渡った!

「くっ! 力で敵うと思ってるのか!」
「いや、思ってないよ。
 だけど剣道は力だけじゃないだろ?」

 白真はすっと力を抜き、大剣の刃に自分の刃を滑らせる。

「なっ!」

 海原の体のバランスが崩れたと同時に、白真は一回転して斬りつけた!

「ぐはっ!」
「召喚・大蛇の縄!」

 海原の体が蛇に絡まれる!

「うっ!!」

 ミシミシという骨の音。
 そして白真は殺気を含んだ目をして海原を見下ろした。

「この勝負、俺の勝ち」

 それだけいうと、海原は意識を失ったのである・・・・

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