《MUMEI》
プリント整理
「いいな〜、祐也」


「…じゃあ替わってくれよ」


俺は拓磨に訴えた。


「う〜ん…」


「「駄目だぞ、部活あるんだから」」


悩む拓磨を、守と真司が引っ張っていった。


真司と拓磨は、サッカー部期待の新人だった。


拓磨と同じポジションの守は、補欠確定だと悔しがっていた。


(あぁ〜…)


俺は小さくなっていく三人を、名残惜しそうに見つめていた。


三人と同じように、部活がある連中や、俺と同じようにバイトがある連中は、早々に教室を後にしていた。

残ったのは、津田さんの取り巻き達と、


「よろしくね、田中君」


俺に微笑む津田さんだけだった。


「はい、お互いバイトがあるし、早く終わらせましょうね」


俺はテキパキと、担任が置いていった数種類のプリントをまとめてホッチキスでとめていった。


「ねぇ、田中君はどれに出るの?」


印刷ミスでページ数が書いて無かったので、津田さんがプリントに番号を書き込みながら質問してきた。


プリントは、来月行われる陸上クラスマッチの資料だった。


「走り幅跳びにするつもりです」


俺は、一番目立たない種目を希望していた。

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