《MUMEI》 ギリギリ普通「もう、最後の一部だったし」 「あれは最後に全部段ボールに入れて、おしまいなんだよ」 「それを、お前。津田さんに押し付けやがって」 「すみません。戻ります」 俺は再び上履きに履き替えようとした。 「もう他の奴らが手伝ったよ!」 「わ」 突き飛ばされそうになり、思わず避けると、勢い余って男が転んでしまった。 「テメェ!」 もう一人の男が俺に殴りかかる。 「ちょ、俺のせいじゃないよ!」 男の拳を避けながら叫んだ。 (まずいな…) 体格のいい男二人と、普通の俺。 これ以上避けると、普通じゃなくなる。 (どうする?) 走って逃げても、逃げ切ったら普通じゃない。 『可愛い祐也』 (仕方ないな。忍も、旦那様が嫌がる事はするなって言ってたし) …俺は普通から外れる覚悟を決めた。 「おい、何止まってんだ?」 「何か…こいつ…」 俺の変化に二人が沈黙した。 (さて、軽く殴っとくか) その時。 「おいおい、いじめか?」 「葛西先輩」 俺は、普通に戻り、たまたま通りかかった空手部主将の名を呼んだ。 男二人は、慌ててその場から立ち去った 前へ |次へ |
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