《MUMEI》
どのくらい寝たのか。気がつくと暗がりの目の前に誰か居る。
俺の額をそっと触った。
「・・・あ・・・」
あいつが俺の顔を覗き込んでいた。怒りを含んだ眉と瞳。
「ちょっと待ってろよ。水と薬を持ってくる」
俺は信じられなかった。あいつが俺の部屋にまた来た!
裏切りと苦痛の思い出の部屋に!
「・・・なぜ、戻って来た?」
俺の頭の下に枕を敷いて、コップを近づけるあいつに聞いた。
「・・・お前が三日もキャンパスへ顔を出さないから、みんな心配し出したんだ。携帯も切ってるし・・・」
「俺が様子を見てくるって言って来たんだ。・・・どうせこんなことだろうと思ったよ」
俺は恋人を見るようにあいつの顔を見ていた。
「・・・お前、本当に病気だよ。なんだよ、この周りのティッシュの屑の山・・・この臭い!」
「お前を夢見てオナニーをしたんだ」
「飯も食わずに?」
俺はあいつを見続けながら笑った。
あいつは呆れた顔をして、
「・・・俺がそんなに好きなの?」
「・・・ああ、俺だけの恋人になってくれ」
あいつは複雑な表情をした。
「いやだね。俺は男だし、ちゃんと女の子と結婚して子供を作るんだ」
ああ・・・俺は幻に恋をしたのだろうか。
「・・・お前の子供って可愛いだろうな・・・」
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