《MUMEI》

◆◇◆

「姫ー」

「狐叉ー」

「奏美ー」

 その声に、三人は後ろを振り返る。

 てこてこ、と小走りに駆けて来るのは、三匹の妖。

「どうした」

 夜桜が尋ねた。

 三匹は夜桜の足元まで来て立ち止まると、ぴょこぴょこと跳ねながら、小さな実を差し出した。

「見つけたんだー」

 三人がそれを受け取り口に含むと、三匹は待ち兼ねたように尋ねる。

「甘いかー?」

「美味しいかー?」

 三人が頷いた。

 よく熟れている。

(‥美味しい‥)

 思わず、笑みが零れた。

「此処に居たのか」

 彩貴と月裔が探しに来たらしかった。

「あ、彩貴ー」

 雪兎が、二人に木の実を差し出した。

「美味しいぞー?」

 二人はきょとんとしたが、徐に木の実を受け取った。

 ふわり、と風が吹き、可憐な花びらを揺らして過ぎ去って行った。

◆◇◆

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