《MUMEI》
高山家といじめ
中学時代、俺は一度だけ感情をあらわにして怒る高山を見たことがあった。


それは、高山が、俺の切り刻まれた教科書や、『死ね』とか『馬鹿』と書かれたノートを発見したからだった。


正直、俺は、これが普通のいじめかと呑気に構えていた。


体に傷を付けられるのは困るが、私物を傷付けられたり、捨てられたりするのは特に気にならなかった。


旦那様が俺に遺した金は、無駄にたくさんあったし。

高山は、そんな俺をよそに、犯人を探しあて、呼び出した。


犯人は、数名の男女で、一人の小柄な女子が代表して高山に謝ったが…


高山は、その女子が泣き出す位の勢いで、『俺じゃなくて田中君に謝れ』と怒鳴りつけ


卒業するまで、その男女とは一切口をきかなかった。

高山のいじめ嫌いは正義感からではなく、高山の尊敬するおばが、昔ひどいいじめにあったと父から聞いたからだと、高山は興奮しながら俺に熱く語った。


高山は、そのおばの一言で、両親と同じ医療の道ではなく、自分が憧れていた弁護士を目指す事に決めたと言っていた。


そのおばは、仲村先輩達の母親で、津田さんにも影響を与えたすごい人物だから、当然、三人もいじめには敏感だった

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