《MUMEI》
三十五夜 無常なりけるは
◆◇◆

 はらはらと散りゆくもの。

 夜風に舞う、香しき花びら。

「姫ー?」

「琥鬼か」

「どうしたんだー?」

「いや‥」

 夜桜は目を細めつつ、桜の木を眺めていた。

「儚いと思ってな」

「花が散る事かー?」

 小さく頷く夜桜。

 いつの世も、知らぬ間に時は移り行く。

 分かっているのだが、どうにも憂鬱になってしまうのだ。

◆◇◆

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