《MUMEI》
敏感な双子
「何してるんだ?」

「何してるの?」


「空気入れてるんです」


(珍しいな…)


普段は別行動する事が多い祐先輩と希先輩が、揃って大型スーパーから出てきた。


「昨日も入れてなかったか?」


「気のせいじゃないですか?」


(よく見てるな…)


確かに俺は、昨日チラッと祐先輩を見かけた。


しかし、祐先輩は嬉しそうに話しかける安藤先輩と一緒にいたから、俺の方は見ていないと思っていたのだ。


「一昨日、ドリンク買いに来た時も、入れてたわ」


「…結構見てるんですね」

「父さんと、祐希に頼まれてるから」


(そうだった)


希先輩は、屋代さんが好きなのだ。


その屋代さんに頼まれたら、学年が違ってたって、チェックは入れていてもおかしくなかった。


「柊君が、昔、田中君、…『俺のせいでいじめにあった』って気にしてたし」


「まさか、今回は志貴のせいか? あいつだっていじめ大嫌いだろう?」


「…別に、大丈夫です。俺、バイトがあるんで」


俺はタイヤの硬さを確認して、自転車に跨った。


「体より、心の傷の方が大変なんだからね」


希先輩の言葉が、いじめよりも深く胸につき刺さっていた。

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