《MUMEI》
ストレス発散
「大丈夫か?田中君。具合悪いんじゃないか? 最近遅刻多いし」


「大丈夫です」


胸と胃の痛みに耐えながら、俺は店長に営業スマイルを向けた。


人の良いこの店長の選択肢に、俺をクビにするというものは無かった。


俺に、持病はない。


体は健康な筈だ。


心の傷


(そんなもん、とっくについてる)


だから、考えないようにしてたのに…


胸が痛い。


イライラする。


痛い 痛い 痛い。


「おい、本当に大丈夫か?」


「あ…はい」


その時、騒がしい団体がコンビニに来店した。


(外人…か?)


やや、色黒な肌に、はっきりとした顔付き。


外国人独特の体臭を隠す為につけたキツイ香水が、ヤケに鼻についた。


タバコと酒・それにツマミを大量に購入した団体は…そのまま、駐車場で宴会を始めた。


その声は店内に響くほど大きく、当然のようにそれ以降客足は途絶えた。


「店長、俺、先に上がってもいいですか?」


「あ、あぁ。…大丈夫か?」


俺が頷いて、先に上がると案の定、外国人に絡まれた。


(日系ブラジル人てとこだな)


彼等は片言の日本語とポルトガル語を喋っていた。


(悪いな…)

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