《MUMEI》
第二章 恋人
俺はキャンパスを急いで横切っていた。待ち合わせの時間をとうに過ぎてしまった。
あいつが悪友仲間の一人、Hと話している。こいつは女専門で腹が出ている割には手が早い。ユーモアがあって話しが巧みなのだ。あいつは笑いながらHと話している。背の高いHを少し見上げるようにして話しているあいつは水色のスニーカにジーパン、浅黄の格子縞の半袖シャツを裾出しで着ている。
俺は近づきながら少しいらだった。Hの野郎、あいつを女と話すときの表情で見ていやがる。
あいつが俺を見つけて微笑んだ。Hがあいつの視線を追って俺を見る。少し忌々しそうだ。
「よう、待ったか?」
俺はHに目配せするとあいつに言った。
「遅いよ。・・・じゃ、やっちゃん、また来週」
とHに言った。
「ちぇ、仲良くお帰りかい。妬けるね」
「へへ、だって家が同じ方向だもん」
俺はHの目線を追ってはっとした。あいつはシャツの上の胸までのボタンを外していて、下に光沢がある黒いタンクトップを着ていた。右肩に掛かった大きなスポーツバッグのベルトがシャツの襟をはだけて胸が覗き込めた。あいつの柔らかな胸の線が黒い光沢の下着と合って色っぽい。そして乳首の形が分かった。あいつは俺と同類となったHの盗み見に気づいてない。
俺は慌てて、
「そ、それ持ってやる」
とスポーツバッグをあいつの肩から外した。
「へえ、優しいんだな、気持ち悪い」
「・・・この間お前、肩をくじいてただろう。それに遅くなったお詫びだ」
あいつは俺たちのやりとりに面白く無さそうな顔をしているHに手を振ると、俺に荷物を持たせて歩き出した。
「クラブはどうだった?」
「・・・疲れた。でも練習試合で6点入れたよ。キャプテンに尻触られた!あはっ」
あいつは俺の反応を楽しむように俺の顔を見た。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
ケータイ小説サイト!
(C)無銘文庫