《MUMEI》

◆◇◆

「え‥」

 思いがけない答えに、夜桜は固まった。

 ──会う事は‥出来なかった。

 その言葉が甦った刹那。

 夜桜は、はっとした。

(狐叉が七尾になったのは‥‥‥まさか)

「‥‥‥‥‥‥」

 狐叉は只黙って上を見上げている。

 そして、呟くように話し出した。

「ずっと待っていた‥。いつか、またあの子が私の前に現れる事を願って‥」

 狐叉は徐に話を続ける。

「その日以来‥私は人里へ下りて行ってはその幼女の姿を探した。来る日も‥来る日も‥只あの子に会いたいと、会って何か礼をしたいと、そう思っていたから‥」

 そう、子狐は待ち続けた。 

◆◇◆

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