《MUMEI》

「兄ちゃんと一緒にドコ行こうかなぁ///武も兄ちゃんと一緒に遊びに行く?」
「いや、いいよ俺は…」

そう言ってはしゃいでいるかなたとは対照的に、はるかの方はボーっと空港に向かう電車の中でぼんやりと外を眺めていた。


空港のロビーで待っている間も、はるかはじーっと到着口を食い入るように見つめていた。

「もうそろそろだよな…お前ら到着時間とか聞いてるんだろ?」
「うん、もう着いてるって、ほら上に書いてあるし」

そう言ってかなたが到着ロビーにある電光掲示板を指さしていると、はるかが突然今まで座ってたイスから立ち上がった。

「兄さん///」
「えっ?あ、おにーちゃー///」
「ぉ…お兄さん」

到着口からこっちに来る金髪でマッチョなお兄さんの姿を見つけた瞬間、はるか奴の今まで不安そうだった顔が一気に明るくなり、かなたは両腕を思いっきり振ってピョンピョン飛び跳ねていた。

「にいちゃ〜抱っこ///」
「あぁ、かなた大きくなったなぁ」
「前に会ってから数ヶ月しか経ってないよ〜〜///」

お兄さんは飛びかかってきたかなたを軽々と片腕で抱き上げると、まるで猫の子をあやすようにかなたの頭を撫でて、数ヶ月ぶりの再会を喜び合っていた。

「…ぁ」
「はるか…」

お兄さんは積極的に飛びついていったかなたとは対照的に、じっと見つめるだけでモジモジしていたはるかに顔を向ける。

それを見越していたように落ち着いた足取りでゆっくりとはるかの側に近づくと、愛おしそうにその身体をギュッと抱きしめた。

「お前は、寂しく無かったか?」
「ぅ……うぅ〜///」

お兄さんに優しい言葉をかけられて、今まで俺達の前では強気に振る舞っていたはるかが我慢しきれなくなって見た事も無いくらいの大泣きをしはじめてしまっていた。

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