《MUMEI》

「お前が思っているほど綺麗なものじゃない。」

国雄は決して色褪せない姿で、瞳でもって見つめる。
そんな澄み切った瞳に構わず、言葉が出て来る。




「俺はお前が初めて話したところを見た、

初めて歩くところを見た、

初めて書いた文字も言葉も見た。

そうして初めての肉体的快楽の対象として国雄を選んでいた。もうずっと、此処がイカレていたのさ。」

こめかみを軽く突いた。


「だから、意識させるように情事を見せたのか。」

意識させたかったのではない、俺を刻み込ませたかった。


「それでも、俺は勝てなかった。」

俺がどんなにもがいても敵わない。
国雄は母親に飢えていた。

「レイは確かに大きな存在だった……昭一郎も愛していたんだろ?」

あまりに、素直な解釈だ。
笑いが漏れてしまった。

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