《MUMEI》
キング再び
相変わらずタイヤの嫌がらせは続いたので、俺は店長と相談して、一時間遅れでバイトに行く事にした。


「いらっしゃいませ」


「よう、田中」


店内に入ってきたのは津田さんの取り巻き達だった。

「友達かい?」


「そうなんです。こいつ、学校で遅刻の常習犯だから、心配で」


(お前等のせいだろうが)


俺は、トイレの個室を使用中に閉じ込められる回数が増えていた。


閉じ込めた連中は、チャイムが鳴ると慌てていなくなるから、俺は個室の壁をよじ登り、何とか脱出して授業に出ていた。


だから、遅刻の回数が増え、担任や、それ以外の先生からも目を付けられるようになった。


元々俺は、腹の調子が悪くなりやすい体質ということになっていたから、疑う者はまだいなかった。


「そうなのかい?」


「そうなんですよ〜!最近、ここでも遅刻していませんか?」


「誰が遅刻だって?」


大袈裟に店長に話しかけていた同級生が固まった。


「田中君の事を言ってるなら、俺は異議を唱えるよ」

そう言って、睨む高山を見て、同級生達は慌てて逃げ出した。


(馬鹿か)


それは、同級生がいじめを認めたも同然だった。

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