《MUMEI》
クイーンの配慮
「生徒会で忙しいんじゃないのか?」


「志貴に頼まれてね」


(まさか、気付いてたのか?)


高山の話によると、津田さんは俺の遅刻が増え始めたあたりから、何かあると思っていたらしい。


(まぁ、最近調子に乗ってエスカレートしてたしな)

先日、俺は書道の時間に、先生が他の生徒に指導している隙に、Yシャツに墨汁をかけられた。


それは、かなり露骨ないじめだった。


「それに、祐さんも、希さんも気にしてたし」


希先輩の名を口にしただけで、高山は赤くなった。


「とりあえず、助かったよ」


「志貴が、犯人こらしめるって言ってたけど…」


「それはいいよ。やめてくれたら、俺はそれでいい」

「わかった。…優しいんだな」


(面倒なだけだ)


俺は苦笑した。


「じゃあ、俺はこれで」


(普通は、礼をするよな?)

俺は高山を呼び止めた。


「あのさ、来月、うちの学校陸上クラスマッチで、今年は学校じゃなくて、近くの陸上競技場でやるんだ」

そして、俺は以前津田さんと作った資料を取り出した。


「もし、来るならコピー…」


「させてくれ!」


陸上競技場は、高山の通う明皇のすぐ近くだった。

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