《MUMEI》

「あれ、卜部先輩は?」

珍しく放課後の部活動がセットじゃない。

「なんか提出していないプリントを先生に見張られながらこなしてくるって言ってたよ。」

先輩らしい不在理由だ。

弥一の手元を見た。

「なになに?何を描いてたの?」

スケッチブックを隠された。

「ダメ、絶対!」

全身でスケッチブックを隠す。
断固拒否の姿勢だ。
今まで隠し事なんてなかっただろう。

「弥一のくせに生意気だぞ」

「ヤー!」

無理矢理弥一を引っぺがす。
余すとこなく赤らんだ弥一のスケッチブックには、卜部先輩が模写されていた。

あー……、これは恥ずかしいね。

「あれ、弥一泣いてる?!」

机に顔を突っ伏し震えている。

「ふ……グス……ッ
だって、親友って言ってくれたのに……、俺のこと気持ち悪いだろ?」

そうか、弥一は隠してるつもりだったんだっけ。

「弥一、あのな。お前達に悪いけど、

バレバレだ。

あと、ずっと黙っていたけど俺と一緒に暮らしている二人は所謂、ゲイ…………男同士の恋人みたいなもんだ。」

一気に暴露したら弥一には許容量オーバーだったようで固まっていた。

「…………だから、まあ、大丈夫だから。弥一には理解者が必要だろう?」


「白戸…………」

弥一はじわっと涙を滲ませた。

……仕方ない、弥一には俺が必要だ。

頭を撫でてやる。
一人っ子の俺が兄貴にでもなった気分だ。

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