《MUMEI》
三十六夜 悩ましきこと
◆◇◆

 帳の向こうから夜桜達が何やら談話する話声が聞こえてきたが、彩貴は敢えて咎めはしなかった。

「彩貴ー」

 雪兎達三匹が、いつの間にやら文机に乗り彼に笑顔を向けていた。

「勝手に入って来るなと言った筈だろう」

 小さく溜め息を漏らしつつ、だが幾分穏やかな口調で彩貴は言った。

 琥鬼は珍しげに彩貴を見、きょとんとする。

「彩貴、怒ってないのかー?」

 彩貴は何も答えなかったが、怒っていた訳ではなかった。

 只、未だこの無邪気な三匹との接し方に慣れていなかっただけなのである。

◆◇◆

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫