《MUMEI》
アンカー
「祐也、お前アンカーやれ!」


「はぁ?」


走り終えてホッとしている俺に、真司が突然言った。

「何言ってんだ、アンカーはお前だろ」


「俺は、田村(たむら)より遅い」


(田村?)


「誰だ?それ」


陸上部は高藤(たかとう)で、バスケ部は寺島(てらしま)だったから、俺は首を傾げた。


「お前に追い付けなかったサッカー部の一年生。
一年男子の中では、高藤と寺島の次に速いヤツ」


(早く言えよ)


俺は、真司が言った二人しか気にしていなかった。


「な? ほとんど休憩無しの俺だと不利なんだ。頼むよ」


真司の名字は矢上(やがみ)で、自分の番を走って、男女の渡辺(わたなべ)が走った後、再びアンカーとして走らなければならなかった。


しかも、普通は100メートルだが、アンカーは400メートル走る事になっていた。


「な!」


「でも…」


「いいじゃない! ね、交代!」


迷う俺を、走り終えた津田さんがアンカーの列に押し込んだ。


(う…)


そこにいたのは、当たり前だけど運動部の連中ばかりで、帰宅部の俺は完全に浮いていた。


絶対、お前には負けない


皆の目がそう言っていた。

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