《MUMEI》
最終コーナー
女子の最終ランナーの渡辺さんも、瀬川さんと同じバスケ部だった。


渡辺さんは、一気にトップに立ったが、すぐ後ろに二位の選手がいた。


「お願い!」


「う、うん!」


俺にバトンが渡る。


「頑張って!」


「任せろ!」


二位の選手から、あの、小柄なバスケ部の寺島にバトンが渡る。


俺と寺島は、ほぼ同時に走り始めた。


寺島は、コーナーを曲がる時もほとんどスピードが落ちない。


『祐也は真っ直ぐは速いのに、どうしてそんなに曲がり角は下手なんだい?』


俺は、毎日屋敷の敷地内を旦那様と走っていたが、何故か曲がる時は、極端に失速した。


(さっきはコーナー無かったからな)


直線になり、俺は速度を上げた。


寺島の背中が近付くが、最終コーナーでまた差を付けられるのはわかっていた。

寺島が猛スピードでコーナーを曲が…


!?


…ろうとして、足がもつれ、寺島が、バランスを崩した。


そこに、俺と寺島を抜こうと、追い上げてきた高藤が突っ込んできた。


思わず俺は普通を忘れ、必死で避けていた。


最後の直線。


俺の前には誰もいなくなっていた。


しまったと思ったがもう遅かった

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