《MUMEI》
青春ドラマ
「スゲーじゃん、祐也!」
「ヒーローだぞ、お前!」
「スゲーよ、マジで」


ゴールテープを切った俺に、サッカー部の三人が駆け寄った。


「…運が良かっただけだよ」


最終コーナーでぶつかって倒れた高藤と寺島は、最下位は免れたが、8位と10位という不本意な結果に終わった。


「運も実力のうちよ。おかげで、優勝できたし」


津田さんがそう言うと…


「田中君…」


普段は俺を呼び捨てにしている取り巻き達が、俺に近付いた。


「な、何だよ」


身構える俺を前に、取り巻き達は…


「今まで、ごめん!」


一斉に頭を下げた。


(どういうつもりだ?)


怪しむ俺に、取り巻きと親しい拓磨が説明した。


「祐也の価値が認められたんだよ。すごいヤツだって。津田さんのお気に入りだって仕方ないって」


「そんな事無いぞ!」


(俺は、普通がいいんだ!)

「そんな事あるよ!」

「そうだよ!」

「そうよ!」


(う、うっとうしい!)


取り巻き達は次々と俺の手を握り締め、謝罪していく。


(青春ドラマなんてウザイだけだ!)


俺は、クラス全員に胴上げされながら思った。

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