《MUMEI》

◆◇◆

「昨日は‥寝ていないのか」

「ああ。‥‥今夜もそうなりそうだ」

「大変だな‥」

 夜桜は心配そうに呟いた。

 そんな彼女の心持ちに気付いた彩貴が、他にも何か言いたい事があるのだろう、と尋ねると、夜桜は、はっと思い出した。

「そうだ。夜明け前になったら、奏美を送って来る」

「ああ‥分かった」

 暫しの後、彩貴は再び口を開いた。

「夜桜」

「何だ‥?」

「お前の考えには、まだ完璧に賛同していない。だが、否定するつもりも無い‥。どうすればいいのかが‥まだ分からない」

「何をそんなにも気に病んでいる?」

 夜桜は微笑しつつ言った。

「大丈夫だ。お前が妖を認めようと努めている事は、十分に分かっているから」

 彼女の優しい声音に、彩貴は安堵したのだった。

◆◇◆

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