《MUMEI》 「あの女を何度殺してやろうと思ったか。 ……レイは俺の越えられない壁だった。」 昭一郎は泣くように笑う。 「昭一郎はレイを憎んだのか?」 ふと、レイの言葉が過ぎる。 〈取引〉であると。 「レイは国雄に愛されていることを理解しながら、俺と交際することを持ち掛けて来た……。 そうでもしなければ国雄を捕まえられなかった。 レイは国雄の心を捕らえ続けたかった。」 「二人が俺を……?」 信じられない。 「レイはお前しか見ていなかった。」 「昭一郎が好きだったんだろう?」 昭一郎は小さく溜息をついた。 「……語弊があったな、レイは俺と付き合うことで国雄を手に入れて、国雄を手に入れることで俺を縛り付けたんだ。 それが、本心だ。 病室で死ぬ前日に打ち明けられた……」 昭一郎は口だけ動かすように無表情で話す。 「会ったのか……」 それも、レイから呼ばれて。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |