《MUMEI》
ロマンチスト
   〜歩視点〜


携帯を閉めたままボーっとしてると、小湊さんが心配そうに話しかけてきた。


「やっぱり調子悪いの?」


「あっいや。ちょっと考え事してて・・・」


俺は覇気のない返事をする。


「泉で良かったら、相談とか乗るからね?」


そんな俺にキラキラの笑顔を向ける小湊さん。


「もしさ・・・・・」


話し始める俺に小湊さんは相槌をうつ。


「人魚姫みたいに声を失って、大切な人に何も伝えられないって時に

大切な人に魔の手がふりかかるって分かってたらどうする?」


俺は、現実では有り得ないような例えをした。


「・・・・・中原くんってロマン溢れる人なんだね!」


俺の表現に小湊さんは笑顔を零す。


「まぁね!!」


何たって俺はロマンチスト歩だから・・・♪


小湊さんは、俺の反応にまた微笑んだが、すぐに真剣な顔になり真面目な答えをくれた。


「ん〜、声に出しては伝えられないかもしれないけど、字が書けないわけじゃないなら手紙で伝えるって方法もあるし、考えれば他にも方法はあるはずだよ!」


そしてその後ポツリと言葉を零した。


「無理だからって・・・・・そこで諦めるか諦めないかじゃない?」


今まで聞いたどの言葉よりも冷たく発せられた声にいつもと違う印象を受ける。


「だから諦めずに頑張って!!」


しかし次に発せられた言葉はいつもと変わらず、気のせいかなっと思わせた。


キンコーンカンコーン


2限目の始まりを知らせるチャイムが鳴り、小湊さんは前に向き直り授業が始まった。

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