《MUMEI》
第三十九話:デビル・アイ
 全てはこのときのためだった。
 どうしても勝ちたかった。
 どうしてもけじめを付けたかった。
 自分の性でその年、夢乃に宿っていた弟の命はなくなった。
 苦しいはずなのに、夢乃は痛々しいくらい笑顔のままでいた。
 幼心にも、それは重くのしかかった。
 しかし、そのときに悲しんだのは夢乃だけじゃなかった。
 翡翠も幼いながらに泣いていた・・・・


「ようやく出会えた。氷堂尊氏」

 ブラッド社長室。
 暗室の中に少しだけの明かり。
 だが、尊氏の周りは恐るべき覇気が取り巻いている。
 そして専用の黒革の椅子に、尊氏は座っていたのだ。

「篠原快か。ずいぶん成長したようだ。
 噂でも聞いたよ、天才バスターだとな」

 声は変わっていない。
 だが、どこか異様な空気になった気がするが、さすがの快の視力でも確認できなかった。
 しかし、冷静さは失わずに言葉を返す。

「噂だけか? 相手の力量を測れないほど落ちぶれてるわけでもないだろう?」

 少しだけ快は自分の覇気を叩きつける。
 それに尊氏は微笑を浮かべた。

「ふふっ、その通りだな。
 だが、少しは懐かしむ時間を与えてくれないか? 
 容姿だけは義臣にそっくりになってきたんだからな」

 尊氏には自分の姿が見えていた。
 少々明かりがなければ自分に不利なようだ。

「容姿だけだと思うなよ」

 そういった次の瞬間、快は天井を破壊する!

「破壊力も上がってるんだからよ!」

 ブラッド本社を燃やしていた火が暗室に差し込んだ。
 だが、快が見たものはかつての尊氏の顔ではなかった。

「それは・・・・!」

 左目に入った赤い機械の目。
 傷口はそのままだが、目そのものに生命を感じる。

「昔、言ったことがあるだろう?
 風野博士が作り上げた『デビル・アイ』だ」

 それはかつて快達に持ってくるように命じたもの。
 それをこの八年間で尊氏は手にしていたのである。

「私の目になじむのに時間がかかったが、今では最高の気分だ。
 これで義臣に復讐できる」
「ぐはっ!!」

 快は吐血した!
 デビル・アイから発生した衝撃波の直撃を受けていたのだ!

「その前にまずはお前からだ、篠原快」

 決戦の火蓋は切って落とされた。

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