《MUMEI》

◆◇◆

 霊には、好んで言葉を話すものと拒んで話さぬものがいる。

 この霊は、話す事を好まぬものらしい。

 白くぼうっと浮かぶその姿は朧だが、どうやら女であるようだ。

 二十歳になるかならないか、といった所だろうか。

 随分と大人しい印象を受けるが、何かを思い詰めているらしかった。

「私に‥用があるのか」

 しゃらん‥。

「分かった」

 夜桜は庭へ出る。

「こっちへ来られるか」

 しゃらん‥。

 鈴の音が響いた、その刹那。

 夜桜の後ろから、若人の気配がした。

◆◇◆

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