《MUMEI》

◆◇◆

「お前は何時から彷徨っている‥?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 女の霊は黙り込んでいる。

 夜桜は優しい微笑を浮かべた。

「気にするな。彩貴はお前を厄介払いしたい訳では無い」

 すると女の霊は安堵したか、くっきりとその姿を現した。

「‥‥‥ぁ」


 美しい、と思う。

 銀色の長い髪に、竹色の瞳。

 透き通るような肌。

 手に握られた紐の先には、大きな鈴。

「───────」

 寂しげに微笑む女に、夜桜は釘付けになっていた。

「鈴音」

 しゃん、と刹那驚いたように小さく鈴が鳴った。

 夜桜は問う。

「そう呼んでもいいか」

 しゃらん。

 はい、と答えるように、女は鈴を振った。

◆◇◆

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