《MUMEI》
帰り道
打ち上げが終わり、俺達は店の外に出た。


「ご馳走様でした!」


俺達、一年五組の面々は、大人三人に向かって頭を下げた。


「悪いわね」


「そのつもりで、一緒しようって誘ったんだろ」


「それもあるけど、志穂さんに会いたかったんですぅ〜」


津田さんは、甘えた口調で志穂さんの腕にしがみついた。


仲村さんと屋代さんは、そんな津田さんを見て呆れていた。


「田中君、乗ってく?」


「あ、俺、チャリ…?」


『だから』と続けようとした俺は、目を疑った。


俺を誘った屋代さんの車の助手席には、当たり前のように仲村さんが乗っていた。


「今日は、祐も外泊だから、女三人で語り合うのよ」

津田さんの説明に、皆、仲村さんに同情の眼差しを向けた。


(違う)


車に乗っていた二人は明らかに嬉しそうだった。


(やっぱり、志穂さん、安藤先輩と一緒…なんだ)


志穂さんは、そんな二人を笑顔で見送っていた。


(う…)


不意に俺は志穂さんと目が合ってしまった。


志穂さんは、人差し指を自分の唇にあてた。


『内緒よ』


そう、言われた気がして俺はドキッとした。

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