《MUMEI》
三十九夜 零れし涙
◆◇◆

「女の方が中に‥?」

 奏美は些か驚いた素振りをみせた。

 夜桜は苦笑し、説明する。

「居心地がいいようだから、暫くこのまま様子を見ようと思ってな」

 奏美が女の名を問うと、夜桜は答えた。

「本当の名は分からないが‥私は鈴音と呼んでいる」

「鈴音‥?」

 こくり、と夜桜は頷いた。

「私が動くと、中にいる彼女が身に着けている鈴が鳴る。なかなか楽しいものだぞ」

「鈴音さんは何故姫様に‥?」

「何か理由があるようだが‥今はまだ」

「そうですか‥」

「奏美」

「はい」

「聴かせてやってくれないか、お前の琵琶を」

◆◇◆

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