《MUMEI》
大失敗
数日後、一番最後に数学の答案用紙が各自に返された。


「満点は、学年で田中だけだ」


副担任の言葉に、教室中からドヨメキが起こった。


満点の出た教科は数学だけだった。


(しまった)


思いきり、注目を浴びた俺は、ずっとうつ向いていた。


『お前は馬鹿か。普通に考えればわかるだろう』


昨夜忍から言われた言葉が頭の中でグルグル回っていた。


(本当に、馬鹿だ、俺)


あんな立派な屋敷の旦那様の高校が、普通なわけないのに。


今回数学のテストを作成した学年主任は、絶対正解者はいないだろうと思いながら、あの問題を作成していた。


それは、俺達のような普通の高校ではまだ教えていない、高山の通う名門・明皇の中間テストで出された難問だったのだ。


「ちょっと試しにって入れたらしいけど…田中、よく解けたな。塾ででもやったのか?」


「センセー、祐也は塾行ってません」


守の余計な一言のおかげで、俺の答えに皆注目していた。


(仕方ない)


旦那様に教えてもらったとは言えない俺は…


「明皇に行った同級生…高山君とテスト勉強してたんで」


皆が納得する嘘をついた。

高山に苦手科目は無かった

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