《MUMEI》

「1本決めるぞ!!」


「おぅ!!」


士気の高まる海南。


ようやく終わったオールコートマンツー。


点を詰めるにはここしかない。


誰もがそう確信していた。


右サイドが上がる。


サイド上がりだ。


「サイド上がったぞ!!」


そう声を出していたのは、ベンチの翔太だ。


通常ならば自分のマークマンが上がったのだから日高が声を出さなければならない場面だが、


疲れからそれを怠る。


右サイドはセンターにボールを渡すとそのままポストへ。


「ポストダブルだ!!」


翔太が叫ぶ。


センターからボールがエース45千葉へ。


前半も残り少ない。


早く点差を詰めたい千葉は、ロングシュートを打つ。


そんな姿勢が一目で伺える。


しかし、それを止めに行かない峰田。


自分が前に出たらポストに落とされるのでは?


そんな不安が過ったからである。


「バカ!!フリーで打たせんな!!」


思わず声を上げるクロと翔太。


9メーターラインから打たれたシュート。


「バシッ!!」


村木が止める。


「よしそっ…」


言葉を無くした。


村木が止め、速攻。


理想的なパターンだ。


しかし、両サイドは走り出してはいなかった。


(僕のミスか…?)


前半残り6分。


11対7。


静かに…


だが確実に…


負の連鎖が始まっていた。

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