《MUMEI》
単純なキング
その日の夜、俺はアパートに高山を呼び出した。


「悪いな、急に。まぁ、上がれよ」


「お邪魔します」


俺は、いざというときに、テスト勉強を一緒にしていたと口裏を合わせて欲しいと、高山に頼んだ。


「別にいいけど…」


「悪いな。あ、これ、お礼ってわけじゃないけど…」

「?」


高山は、俺が差し出した封筒の中身を確認した。


「こ、これ…」


「学校新聞に載った写真の一部。問い合わせて、写真部に焼き増ししてもらった」


それは、クラスマッチの際、写真部が撮影していた…

クラスマッチ用のクラス全員の名前が入ったTシャツを着て、女友達とはしゃぐ希先輩の写真だった。


(焼き増し希望の男共が殺到したのは黙っておこう)

「あ〜、後さ、俺、希先輩と一緒に夏休みに屋代さんの働いてる老人ホームにボランティアに行くんだけど…」


「日程教えて!」


高山がいそいそと筆記用具を取り出した。


(単純だけど、…俺も、きっとこんな感じだったんだよな)


真っ直ぐに、一途に。


好きな人の事ばかり考えている時が…


こんな、俺でも確かにあった。


(痛っ…)


ズキンと、胸が痛んだ。

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