《MUMEI》
言い訳の確認
高山が帰った後、俺はいつものように忍に報告メールを送った。


(珍しいな)


忍から、電話が来た。


《そろそろ、体育は水泳か?》


「来週からな」


《わかってると思うが…》

「見学だろ? 保健医がちゃんと体育教師に説明してた」


《ちゃんと?》


「俺は、背中に両親と一緒に交通事故に遭った時の傷跡があるって」


保健医の判断で、体育教師には嘘をついた。


体育教師は、若く、生徒達と友人や兄のように接していて、…口が軽かった。


《そうか。ところで、保健医は、お前の背中について、本当に気付いていないな?》


「…刺青と毛の事しか気にして無かったよ」


(春にも言っただろ)


《とにかく、これ以上目立つなよ。お前、最近思ったんだが…結構抜けてるからな》


「悪かったな!」


(ヤベッ…)


俺は慌てて口を押さえた。

《そういう所が抜けてるというんだ。隣、厄介な住人がいるんだろ?》


(…今日は仲村さんもいるしな)


「気をつける」


《八月に入ったら、見に行く。九月はこっちも忙しいからな》


「そうだな」


九月に屋敷で大事な行事がある事を、俺は知っていた。

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