《MUMEI》
猛暑
その夏は、水泳が出来ない俺に対する嫌がらせのように、暑い日々が続いていた。


その上、中間テスト終了後の席替えで、俺は窓際の席になってしまった。


(死ぬ〜)


冷暖房完備で一年中快適な離れで生活していた俺は、その暑さに毎日ぐったりしていた。


そんなある日。


(おいおい、授業中だぞ)


ふと窓の外を見た俺の視界に、渡り廊下を歩く祐先輩と葛西先輩の姿が入ってきた。


二人の行き先は、エアコンのある保健室だった。


俺は呆れながら、再び授業に集中した。


(あ〜、やっと終わった)


「祐也、大丈夫?すごい汗よ」


ガバッ


「は、はい、大丈夫です!」


津田さんの声と手に反応して、俺は姿勢を正した。


(あ、危なかった…)


俺の横に来た津田さんは、ものすごく自然な動きでうっすらと汗をかいた俺の顔の…前髪に触れようとしていた。


「そう?…あ!」


「? どう…」


(ゲッ)


津田さんに続いて窓の外を見た俺は、自分の荷物の他に、多分…祐先輩の分の荷物を持った希先輩を見つめた。


希先輩が慌てて向かっている方向は、保健室だった。

(多分、今頃祐先輩、葛西先輩とヤッてる、よな…)

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