《MUMEI》 ◆◇◆ ざっ‥。 ざっ‥。 「‥‥‥‥‥‥」 向かっているのは祇園の方角。 だが次第に、夜桜は息苦しさを感じるようになっていた。 鈴音の影響だろう。 足取りが重くなる。 だが、止まる訳には行かない。 進まねば。 「‥‥‥‥‥‥‥」 しゃらん。 「大丈夫だ。もうすぐだから」 足を引き摺るようにしながら、懐を押さえて歩き続ける。 次第に、市からの賑やかな声が聞こえ出した。 しゃらん。 内側から聞こえる鈴の音が、大きくなる。 夜桜はそれに応えるように、前へと歩き続ける。 ◆◇◆ 前へ |次へ |
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