《MUMEI》 泣けない何故? ―何故? 何故、私は泣けないの? ―何で? 誰かに罵ってもらいたい。死に対面しても涙を流さない私を、薄情者だと。 どれだけ年月が過ぎようと、私は泣けない。 妹が地上を去っても、私は涙を流すことなく、今日まで過ごしている。 妹が此処からいなくなってから、もうすぐ一年が経つ。冬が、来る。 妹を亡き者とした冬。 彼女は冬が好きだった。 「冬には羽が舞うから。」 そんなクサイ台詞を恥ずかしがらずに言う彼女が好きだった。 私が持っていない、素直というものは、彼女が溢れる程持っていた。 私が所持しているものは、意思の強さ。 頑固な私は、自分を曲げない。 そんな私に、素直なんて言葉は無縁だった。 クサイ台詞なんて、言おうとしたことは一度たりともない。 なにより、私が言っていいものではないと思っていた。 だから、羨ましかった。 そして、嬉しかった。 素直な妹の姉であったことが。 そして、私の頑固は今や最悪の力を発揮している。 妹が死んだときに泣かなかった私は、今も泣けない。泣くことが出来ない。 頑固だからかなんて、分からない。 もしくは、そのせいにして、逃げているだけなのかもしれない。 “泣かない” という現実から。 だけど、泣けない。 “泣かない”のかもしれないけれど、今の私は泣くことを無くした。 または、隠してしまったかのどちらか。 私は曖昧だ。 存在も、感情も。 現在、私はそれ以外では、意思を無くした。 私が頑固なのは、それだけになった。 今の私は、生きながら死んでいる存在。 意思なんて無論。 意志なんて以っての外。 もう私は、あと数十年を何となく生きるだけ。 意味なんていらない。 意志なんて必要ない。 同じ日を何千回と繰り返す。それだけ。 それだけだと、思っていた。 妹が、戻ってくるまでは。 次へ |
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