《MUMEI》 特別出演相田先生の説明によると、希先輩は相田先生の台本作りを時々手伝っていたらしい。 「希ちゃんのおかげで、すごくいい台本が出来たんだけど、肝心の役者が人数が足りなくて… 丁度、前に希ちゃんと、高山家でこの劇やるなら…みたいな話で盛り上がったの思い出して、希ちゃんから、二人に台本渡して出演交渉してもらうつもりだったの。 今日やっと台本できたから…」 そう言って、相田先生は俺を見つめた。 「まさか…俺にその出演交渉しろとか、言いませんよね」 「ううん。希ちゃんに、届けてほしいの」 そう言って、相田先生は素早く希先輩の住所と地図を書いた。 「先生か、演劇部の誰かが…」 「行きたいけど、私は今日は帰り遅くなるし、部長、今日欠席してるのよ。 ね? いますぐ行っていいから」 面倒で時間がかかる委員の仕事をやらなくていいと言われたら… (普通の答えは、こう…だよな) 「わかりました」 俺は頷いた。 相田先生は、ついでに俺にも読むようにと台本をくれた。 そして俺は、『不器用な女王様』という何とも妖しげなタイトルの台本を四冊持って、仲村一家の住むマンションに向かった。 前へ |次へ |
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