《MUMEI》

◆◇◆

 草愁は隙を見て仕事を抜け出して来たのだという。

「大丈夫なのか、そんな事をして‥」

「はい、そんなに長居は出来ないですが‥」

「わざわざ訪ねて来てくれたのか」

「是非ともお渡ししたい物があったので‥」

 草愁は徐に懐からある物を取り出した。

 それは、御守であった。

「夢花が残して行った物です。お受け取り‥願えますか」

「夢花の形見‥か」

「はい」

「なら、お前が持って居るべきなのでは‥?」

「いえ、姫様にお持ち頂きたいのです」

「夢花が‥そう望んだのか」

 草愁は、こくり、と頷いた。

◆◇◆

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