《MUMEI》

◇◆◇

 安堵からか眠り込んでいる姫君の表情を愛しげに見つめつつ、若君は呟いた。

「僕は面倒をかけてばかりだね」

「竹千代様は‥若君はどちらへ行かれていたのでございますか‥?」

「何処だろう‥」

 竹千代は朧げに答える。

「誰も知らない所‥。誰にも見つからない場所‥」

「何故‥そのように身を潜めて居られたのですか」

「束縛から離れたかった。只、それだけ」

「姫様を独りにさせてまで‥?」

「本当はこんな事‥したくは無かった。でも‥僕達は一緒にいたらいけなかったんだ」

◇◆◇

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