《MUMEI》

◆◇◆

 ぽてっ。

 ぽてっ。

 文机に向かっていた夜桜に、黒手毬が何かを知らせに来た。

「どうした」

 ぽてっ。

「誰か来たのか」

 ぽてぽてっ。

「分かった、今行く」

 夜桜は筆を置き、庭の方へと向かった。

「‥‥‥‥‥?」

 そこには、若い夫婦(めおと)が佇んでいた。

 若妻の方は、腕に赤児(あかご)を抱いている。

 その赤児に、夜桜は、はっとした。

(この子‥)

 夢花だ。

 まだ目は開かないが、髪の色、表情から彼女であると直ぐに分かった。

 すると若妻が前に進み出、夜桜に言う。

「姫様、唐突の失礼をお許し下さい。一つお願いが‥」

「お願い‥?」

 若妻は頷く。

「娘の‥名付け親になっては頂けませんか」

◆◇◆

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