《MUMEI》

◆◇◆

「私に‥この子の名を‥?」

 はい、と若妻は頷いた。

「この子が、突然泣き出したのです。あやしていましたが、どうにも泣きやまず‥ですが此処へ来ると、ぴたりと泣きやんだので‥姫様に御縁があるのでは、と」

「この子は、今朝生まれたのか‥?」

「はい。ですがまだ、娘には名前がありません。貴女様に、どうか付けて頂きたいのです」

「いいのか、私で」 

 夫婦が、是非、と頼み込むので、夜桜は承知した。

「この名で‥構わないなら」

 夜桜は筆を取り、二文字を紙に認(したた)めた。

 その紙を手渡すと、若い夫婦は目を細めた。

「鈴音‥」

 ありがとうございます、と二人は言い、深々と頭を下げた。

◆◇◆

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