《MUMEI》
冷戦状態
翌日から、学校内で祐先輩と希先輩が喧嘩しているらしいという噂が広まっていた。


「何かね、希が一方的に嫌ってるみたい」


「…そうですか」


(わざわざ言いにこなくてもいいのに…)


最近津田さんは、理由を付けては俺の近くに来るようになっていた。


俺としては、迷惑なのだが、それを口には出せずに困っていた。


唯一の救いは、俺と親しい同級生の中に、津田さん大好きな拓磨がいた事だった。


「何の話?」


この日も拓磨は、俺と津田さんの会話に入ってきてくれた。


「祐先輩と希先輩の話だよ」


「あぁ、昨日、料理部の差し入れあったけど、見事に祐先輩だけ希先輩に無視されてたな」


料理部は、夏の大会前のこの時期、こまめに運動部への差し入れを行っていた。

「希、滅多に怒らないのに、祐、何したのかしら?」

(そりゃ、身内がホモなら普通嫌だろ)


希先輩は、おそらくその決定的な現場を見てしまったに違いない。


(多分、希先輩経験無いだろうし…)


純情な恋する乙女には、刺激が強すぎると俺は思っていた。


放課後。


図書室で、希先輩と相田先生の話を立ち聞きしてしまうまでは…

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