《MUMEI》 一番許せない事別に、俺は立ち聞きや盗み聞きが趣味ではない。 屋上の時もそうだが、俺はタイミングが悪いのだ。 この日も、先日在庫チェックで発覚した長期延滞の本を、俺はやっと回収してきたところだった。 (話が終わったら報告しよう) そんな俺の耳に響いた希先輩の言葉は… 「二股だけは許せないの!」 ―だった。 (祐先輩達の事、だよな?) 仲村さんの事も知っている俺は、かなり動揺した。 (でも、それだったらもっと落ち込むよな) 父親が母親と、…自分の片想いの相手を二股かけているのだから。 頭の中を整理してできたその事実に、俺は改めて仲村家の普通じゃない関係を実感していた。 それから、相田先生は、希先輩を司書室に連れていった。 (報告は明日にするか) 俺は、とりあえず本を元の位置に戻し、図書室を後にした。 数日後。 珍しく、屋代さんとゴミ捨てが一緒にならない日があった。 その日は、バイトから帰ってきても屋代さんのポストに朝刊が入っていたから、前日から外泊なんてかなり珍しいと思った。 そして、翌日。 廊下ですれ違った希先輩の目は、真っ赤で、瞼も腫れていた。 前へ |次へ |
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