《MUMEI》
鈍感キング
(まぁ、いるかもとは思ってたけど…)


バイトから帰って来ると、俺の部屋の扉に、高山が寄りかかってた。


「お前、文化祭の準備は?」


明皇の文化祭は、バイト先のコンビニに貼られた日程が間違っていなければ、二日後に迫っていた。


普通は今月期末テストもあるのだが、明皇は二学期制なので、期末は九月に行う予定になっていた。


「そんな事より!」


「希先輩の事か?」


俺は、周囲を警戒しながら質問した。


「そうだよ!」


(やっぱりな…)


希先輩は、真面目で律儀な人だから、自分が傷付いていても、相田先生に頼まれたように、高山に台本を渡して出演交渉したのだろうとは思っていた。


だからこそ、俺は高山の訪問が予測できた。


俺は、高山を部屋に入れて、隣の屋代さんに聞かれない為に、何度も高山をなだめながら話を聞いた。


(さすが鈍感…)


高山は、希先輩が何に一番傷付いているのか気付いて無かった。


簡単だ。


どういう展開でそうなったかわからないが、希先輩は、屋代さんに失恋したのだ。


一晩中泣いたようなあの目は、旦那様が亡くなった事を知らされた翌日の俺の目とそっくりだったから。

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