《MUMEI》

◆◇◆

 鈴音が来るのを喜ばしく思っているのは、夜桜だけではない。

 彩貴もまた、嬉しく思っていた。

 そして、妖達も。


「可愛いなー」

「うん、可愛いなー」

 鈴音の寝顔を見つめながら、雪兎と琥鬼、風牙が口々に言う。

「起こすなよ、眠っているのだから」

「はーい」

 彩貴に注意され、三匹は小声で答えた。

「でも可愛いよなー」

「夢花にそっくりだよなー」

 夜桜はその様子を見つつ微笑していた。

 只、彼女には一つ気掛かりな事があった。

 狐叉が6日程前から姿を消している。

 向こうに行っているのだろう、と思ったが、寂しい気持ちを紛らわす事が出来ない。

「直に帰って来るだろう」

 夜桜が顔を上げると、仕方が無いな、というように彩貴が自分を見下ろしていた。

 彼は夜桜の肩に手を置くと、徐にその場を去っていった。


◆◇◆

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