《MUMEI》
主役と台本秘話
ちゃんとも何も、津田さんの名前は既に印刷されていた。


「だって、演劇部でもない私が主役なんて普通変でしょ」


「…まぁ、そうですね」


津田さんの口から普通という言葉が出た事に驚きながら、俺は頷いた。


「だから、最初私は『瞳(ひとみ)』だったらいいって言ったのに、いつの間にか『麗子』にされてるし」

『瞳』は劇の舞台である商店街のリーダーで、マドンナ的な存在だった。


(でも、俺も台本読んだけど、津田さんて『麗子』だよな)


常に強気な言動で、美人でクールで。


(まぁ、これは違うけど)


…恋愛に、不器用な女王様。


これは、そんな『麗子』が東京から来たのにセンスゼロの『孝太』をイケメンに変身させる間に、二人に恋心が芽生え、結ばれるという変わったラブストーリーだった。


(半分実話だっていうからすごいよな)


この劇の登場人物は、相田先生のいとこのお嫁さんが住んでいた商店街のメンバーだった。


数年前、いとこの披露宴で、相田先生は、お嫁さん―愛理(あいり)さんを始めとした商店街の女性陣と親しくなり、その女性陣の過去のエピソードの中から、この話を劇にすることにしたらしかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫