《MUMEI》
乙矢15歳
タイミング、
何事にも大切なことだ。


例えば、今だ。


二郎の白い手首。
剃刀の色が余計に手首の白さを引き立てた。

「いけない、二郎には向いてないよ。」

自殺だなんて。

木下家にたまたま母の旅行の土産を渡しに来た、鍵が開いているのに静かで不気味だったので勝手に侵入し、洗面所まで行き着くとこれだ。



二郎を言葉や掌で慰める。
抱き着いてきた彼の髪の柔らかさで、匂いで、

ぞくぞくした。




このまま優しく接吻の一つでもすれば意識してくれるだろう。

……でも、違うな。

こんなにも柔らかくて脆い二郎だ、大事にし過ぎて潰してしまう。

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